2004.8.31

au by KDDI版 Flash Lite 1.1−ファーストインプレッション

◆はじめに

 携帯Flashとして知られるFlashLite1.0は、2003年5月にDocomo505iシリーズからサポートされました。以降FOMA900iシリーズなど、その後のDocomoの携帯電話ではFlashLite1.0がサポートされるようになっています。
  FOMAシリーズのFlashLiteではそれまで20KBだったファイル容量の制限が引き上げられ100KBになったり、SMF(Standard Midi File)形式のサウンドも使用可能になるなどのマイナーアップグレードがほどこされました。

 2004年の7月にはauでもFlashLite対応が発表されました。auが対応しているFlashLiteはバージョン1.1ですが、メジャーアップグレードといえる機能強化が施されています。
 代表的なものはloadMovieやloadVariablesといった外部データへのアクセス用スクリプトのサポート、携帯機器の機能へのアクセス(バイブレーション制御やバッテリーレベル取得など)サポートなどでしょう。

 FlashLite1.1の仕様について詳しくはマクロメディアの「モバイル&デバイスデベロッパーセンター」ページからコンテンツ開発キット(CDK)をダウンロードすることができます。
 このCDKにはFlash MX Professional 2004(ver7.01)用の追加モジュールのほかドキュメントが含まれています。Flashをver7.2にアップデートしていれば追加モジュールのインストールは不要ですが、ドキュメントには有益な情報がありますのでダウンロードしておくのがよいでしょう。
 「モバイル&デバイスデベロッパーセンター」ページには「Macromedia Flash Lite 1.1 Content Development Kit (CDK) MX 2004」と「Macromedia Flash Lite 1.1 Content Development Kit (CDK) for au Service」の2種類があります。
 前者のドキュメントにはFlashLite1.1の規格・仕様全般についての記述がありますが、後者のドキュメントではauの携帯電話で使用できるものが抽出された内容になっているようです。ナゼか前者が日本語化されているにも関わらず後者は英語だったりします。不思議です。

 ここで重要なのは、「FlashLite1.1=au用FlashLite」という図式は成り立たないということです。FlashLite1.1というのはauに限らずもっと広い携帯機器を想定した規格です。そのためauの携帯電話ではFlashLite1.1の全ての機能がサポートされているわけではないのです。

 とりあえず今回は三洋電機製のW21SAを使用してau版FlashLite1.1(以下単に「FlashLite1.1」とします)をちょこっとだけいじってみて気がついたことや思ったことを書いてみます。コンテンツの制作に関する記述はありません
 なお、この記事はW21SAを使用した場合のものです。他機種では異なる部分も多々含まれていると思われます。ご了承ください。


◆環境

 今回の作業環境は以下の通りです。
 CPU:Pentium M 1.70GHz
 RAM:1.0GB

 OS:WindowsXP Pro Sp1
 Application:Flash MX Professional 2004(ver7.2)
 Mobile Phone:W21SA(au by KDDI)/SO505i(Docomo)


◆確認時にアップロード&ダウンロードしなくてよいのがエライ

 FlashLite1.0でキビシかったのは、実機で確認するためにデータをアップロード&ダウンロードする必要があったことです。他にもキビシイ点は色々ありますが、まずこの点で萎えるものがありました。  確認するたびにパケット代が発生するため、「確認料」とか「テスト代」という言葉が思い浮かんでいました。
 FlashLite1.1ではメモリカード経由でPCから携帯にデータを移動して確認できるため、「確認料」が不要になりました。

 メモリカードにPCとのやり取り用のフォルダを作成(W21SAの[メインメニュー]−[miniSDメニュー]−[miniSDフォルダ])しておくと、PCにマウントしたときに次のようなフォルダを見つけることができます(ここでは仮にEドライブにマウントしているものとします)。
 E:\PRIVATE\AU_INOUT\
 ここに作成したswfファイルをコピーします。
 メモリカードを携帯に装着してPCフォルダ画面([メインメニュー]−[miniSDメニュー]−[miniSDフォルダ]−[PCフォルダ])でコピーしたファイルを選択し「メニュー」ボタン[本体へ移動]を実行するとデータが本体に移動します。その後グラフィック画面([メインメニュー]−[データフォルダ]−[グラフィック])で再生することができます。
 なお、メモリカードからの再生はできません。また本体からメモリカードへのデータコピーもできません(この点はFlashコンテンツの著作権保護の観点から妥当な仕様だと思われます)。
 ただし、loadMovieやloadVariablesを使用したコンテンツは従来どおりオンラインにアップして確認する必要があります

 メリットの追加よりもデメリットの解消が望まれるケースというのは多いものですが、「確認料」の問題はその典型的なものだと感じます。


◆100KB以上のコンテンツが作成できる?(loadMovie)

 FlashLite1.1でのFlashコンテンツのファイル容量制限はFOMAのFlashLite1.0と同様100KBです。では単独のswfファイルが100KBの容量制限をクリアしていればそれで全てOKなのかというと、必ずしもそういうことではありません。
 KDDIの「Flashコンテンツを作ろう」ページには、「loadMovieを使用する場合でも、ロードする元のFlashファイルとロードされるFlashファイルの合計が100KB以下にする必要がある」という旨の記述があります。
 つまりロード元swfファイル(以下「親swf」)が80KBでロードされるswfファイル(以下「子swf」)が60KB、というようなケースは不適切であることがわかります。
 しかし、実際には100KB以上のFlashコンテンツを作成することは可能です
 例えば親swfが25KBで、子swfが20KBだったらこれは問題ありません。では子swfが複数存在し、必要に応じて切り替えるという形のものを考えてみましょう。
 例えば、親swfが50KBで、それぞれ30KBの子swfが10個あったとしたらコンテンツの総データ容量は50KB+30KB×10=350KBになります。
 前述のKDDIのページによればこれはアウトですが、同時に複数の子swfがロードされた状態でなければその時点での合計ファイル容量が100KB以下に収まるのでOKになります。
 写真データを子swfとして外部に置いておき、親swfのボタンで切り替える、というコンテンツであれば、子swfを同時に複数ロードしておく必要はありません。複数の子swfを差し替える仕組みでよいので合計で100KBを越えるコンテンツの作成が可能になります。

 これはコンテンツ制作の観点からはとても可能性を広げてくれるものですが、ユーザの立場から考えると気がつかないうちにデータをダウンロードさせられていることになりかねません。制作側としては予め総データ量を表示しておくなどの配慮が必要になるでしょう。


◆再生速度が上がったのが嬉しい

 これはFlashLiteの規格の問題ではなく単純にハードウェアの問題なのでしょうけれど、ひとりのユーザとしてはコンテンツがさくさく動くのは気持ちよいものです。
 私が試した機器は前述の「◆環境」のところにもあるとおりSO505iとW21SAです。Docomoの機器もFOMAや506iならもっと速くなっているはずでしょうから、これは本当に私個人の環境下での感想です。
 ちなみにアニメーションの再生速度を計測するムービーを作成して試したところ以下のような感じでした。
 ・移動のモーショントゥイーン:
  →SO505-約10.1fps / W21SA-約74.7fps
 ・移動+アルファのモーショントゥイーン:
  →SO505-約8.2fps / W21SA-約44.5fps
 ・移動+拡大・縮小のモーショントゥイーン:
  →SO505-約8.0fps / W21SA-約36.5fps
 ・移動+回転のモーショントゥイーン:
  →SO505-約9.4fps / W21SA-約61.1fps
参考程度ながら圧倒的な速度の向上がわかります。


◆その他

 とりあえず色々試していますが、よくなった点、まだまだな点気付くところは多いです。
 また技術的な部分以外にも、携帯Flashの効果的な使いどころ、というのが依然として微妙な気がします。「無料の」ミニゲームならアリだと思います。有料のゲームなら105円(税込み)でJavaやBrewベースのよくできたものがたくさんありますし、Flashベースのゲームではデータをローカル保存できない、というのが大きな弱点になります。

 また、携帯ではFlashPlayerのアップデートができないのも歯がゆいところです。
 FlashLite1.1の機能を使おうとするとDocomoは切り捨てることになり対象機種が大変に少なくなります。FlashLite1.0を使用すれば対象機種は多くなりますが、機能的な制限が大きくてツライ。
 近い将来には携帯でもFlashPlayerのアップデートができるようになると期待していますが、そうなったら本格的に携帯Flashが普及していくのではないかと思います。

 とりあえずもう少しいじってみようと思います。


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