2001.7.11

第三部〜回収編〜 その13

◆破産申請書の内容

 週が明け、午後一番に地裁の記録閲覧室に行く。必要な書類を提出し、待合所で該当する記録を持ってきてくれるのを待つ。思いのほか時間がかかるもので40分以上も待つ。他に待っている人が4、5人いるがみな弁護士のようだ。ようやく私の名前が呼ばれ、書類を渡される。相手方弁護士が作成し提出したジジイの破産・免責申請書類である。
 記録閲覧室は安っぽい長テーブルがたくさん並べられており、いろんな人が熱心に記録を見ている。ふと、トイレに行きたくなったらどうしよう、などと頭に浮かんだが、それはそのとき考えよう。
 閲覧室の横ではついたてでしきられたスペースで、コピー業者が忙しそうに働いている。記録は持ち出し不可なので、コピーしたいときにはコピーしたい範囲を備え付けのしおり(不要な紙を切り裂いただけもの)ではさんで業者に頼むのである(結構高い)。
 
 申請書類には申請者(ジジイ)の職業、年齢はもとより、破産に至った事情や借金の使い道、贅沢品の有無、過去数年以内の海外旅行の有無、その他の資産などが書かれている。もちろん債権者名簿もある。
 パッと見、気にかかったのは屋号を単に「K工務店」としているところだ。株式会社を称して何十年も営業していたのだから「株式会社K工務店」とすべきじゃないのか?もっとも「株式会社K工務店」と記載しても実際には株式会社ではなく、申請の際に登記簿も提出できず不利になるだけなのでわざわざ株式会社をつけて書くはずはない。また、板橋の土地についての記述もある。なんでも板橋の土地は境界線について東京都と認識に食い違いがあり、東京都の主張する境界線では土地が袋地になってしまい売却しても価値がないということだ。が、その東京都との認識の違いも、どうしてそのような食い違いが生じたかわからない、などという旨が書いてあり、さらにそれが事実であることを示す客観的な証拠書類なども添付されていない。つまり、その認識の食い違いという件は相手方弁護士が勝手に主張しているだけという見方もできる。
 
 とりあえず、重要そうなところをコピーしてもらうことにした。コピーは順番待ちでしばらく時間がかかりそうなので、受け取れそうな時間を聞いておき時間をつぶすことにする。私は簡易裁判所の地下にあるドリンクの自販機があるコーナーがお気に入りなので、そこでしばらくココアなんかを飲んだりしてみる。このコーナーは紙コップの自販機があるので私は気に入っている。紙コップの自販機は概ね値段が安いのと、なにやら軽いノスタルジーを感じるのとその当たりが気に入っている理由である。かなりどうでもよい。
 
 さて、コピーが完了し料金を支払い帰宅する。家でコピーに目を通していると、ムカツキながらも色々と状況がわかってくる。まず、破産の申請日が2001年1月19日であった。これは謀らずも(イヤ謀ったのかもしれないが)第一回口頭弁論の本来の日付と一緒である。また免責決定もそれからほどなく出ており、私の裁判の判決が確定する以前にジジイは破産・免責の決定を受けていたことになる。また、債権者名簿を見てみると私はこれでも比較的大口の債権者であり、ムカツキもひとしおである。それから、私が仮差押えのときに空振りした2,000円しか入っていなかった預金口座。あれもどうやら真相がわかった。どうやらキャッシュカードのクレジットサービスを利用するために形だけの口座を作ったということのようだ。他にも2000年中にいくつかの銀行から借り入れをしており、各銀行の調査の甘さがなにやら情けない(自分のことは棚にあげた)。
 
 家内にもコピーを見せたところ、家内は私が気付かなかった点をチェックしてくれた。破産申請の書類に「進行中の訴訟など」のような欄があるのだが、「なし」と記載されているのだ。
家内:「訴状を提出したのが11月だから『なし』っていうのはおかしいよね?」
私:「本当だ。これはオカシイ!」
 相手方弁護士が提出した破産申請書類を閲覧した結果、ますます相手方弁護士への疑念が深まっていった。

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