2001.10.5

第三部〜回収編〜 その17

◆手詰まり

 あらためて思うが、債権の回収とは大変なものである。特に債務者が「支払わない」という堅い決意を持っている場合にはなおさらだ。今回の私のケースはまさにそれに当てはまるのだが、さらキビシイ条件が揃っている。
 
 そのひとつ目は、債務者であるジジイ本人が高齢であり事実上社会との関わりがなくなっている、ということである。どういうことかというと、自己破産といったような、ともすれば自身の社会的信用に関わるような手段もさほどの葛藤もなく取れることである。通常であれば、そのような事態を回避するために支払いの努力をすることが期待できるが、ジジイの場合社会との関わりがない以上、社会的信用が傷つこうが問題ないのである。
 ふたつ目はジジイが遠方に転居してしまったことである。そのためジジイが生きているのかどうかさえわからない。入院しているとオバサンはいっているが、口頭で言っているだけなので真相はわからない。
 みっつ目は債務者側に弁護士がついているために法的知識の部分でアドバンテージがあることである。しかし、この点に関しては相手方弁護士があまりにオッペケペーなので、却ってつけこむ隙になるかもしれない。
 
 実際のところ、債務者が支払いをしないという強い意思を持った上で自己破産し、弁護士が債務者の支払能力の無さを主張している以上、債権回収は難しいと考えざるを得ない。おそらく、貸金業者や弁護士などこの手の事件に手馴れている者だったら却ってさっさと見切って諦めるのではないだろうか。
 だが私は素人なので逆に簡単には見切らない。
 
 以前にも書いたが、要領を得ないまま泣き寝入り同然に矛をおさめては今後この事件を振り返るたびに自己嫌悪にも似た不快感を感じるであろうことが予想できるからだ。また、滅多に体験できないある意味「貴重な体験」であるからという点もある。
 しかし問題は、実際のところどういう手立てがあるか、というところである。
 まともな交渉ができないとなると強制執行という手が思い浮かぶが、言うまでもなく差押えできるような資産はない(あったとしても既に隠している)はずだ。
 となると、ジジイの死を待ちオバサンに相続されてからオバサンに支払いを求めるか。しかし、相続放棄をすることはないにしても(註:債務者側は違法に資産を隠蔽している気配が濃厚なため)、私の債権をオバサンに相続人として手続きをするとオバサンにも通達が行くはずなので、その時点で資産を隠蔽されてしまう公算が高い。そもそもあまりにも気の長い話で気が進まない。
 
 正直なところこれといった策がない。相手方弁護士の暴言もあの程度では特に何かに使い道があるとも考えにくい。事態を動かすためにはやはり債務者側に連絡をとり続けることだろう。
 
 前回の電話(3月21日)から1週間後の3月28日にまたオバサンに電話をかける。このときは、ジジイ本人がいるかどうかを尋ねる。当然入院中であると言われるが、それが本当ならどこの病院に入院しているのか教えて欲しいと告げる。オバサンは何をトチ狂ったか、「病院までおしかけるつもりですか!?」などと言いだす始末である。
 おしかけるつもりなら既に家の方におしかけている。そもそもジジイが入院しているというのは債務者側が口頭で述べているだけで、客観的にそれとわかる証拠を見せていない。病院すら教えられないというのであればジジイをかくまうためのウソとしか私には考えられない。
 が、そこまで強い表現は使わず、病院がわかればジジイが入院している事実を確認できるから、そうすれば退院するまではオバサンに連絡はしないと話し、その方がお互い面倒が少なくてよいだろうとも話す。しかし、オバサンは「教える義務はない」などと言うのである。義務の話じゃあないだろうに。この日の電話はそんな感じで終わりである。さて、今度は相手方弁護士からのクレームの電話が入るはずだ...。

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