2002.2.1

第三部〜回収編〜 その19

◆返信検討

 前回書いたとおり、相手方弁護士から内容証明郵便が来た。内容を要約すると以下のようなものである。
 
 あなたは再三オバサン宅に電話をしているが、オバサンにはジジイの債務を支払う義務はない。オバサンはあなたからの「嫌がらせとも言うべき執拗な電話により大変迷惑を受けており、その精神的苦痛は計りしれない」ものがある。
 しかもジジイは既に破産決定を受けている状態なので、債務を支払う資力がない。どうしても、というのであれば強制執行などの法的措置をとるべきである。
 よって、今後オバサン宅に「電話をすることはもとより、一切接触を」しないよう「強く要求するもの」である
 あなたが、今後も同様の行動をとる場合には「法的措置をとることもあり得」るものである。
 (筆者註:「」で囲まれているのは原文のまま)
 
 まがりなりにも弁護士からの内容証明郵便だったので、私はやや緊張しながら読んだのだが、なんだかずっこけた。なぜなら、一読して相手方弁護士の意図が恫喝にあることが見て取れたからだ。つまり、本気で私を訴える気があるのなら、法廷での証拠にするためにもう少し具体的な記述をするはずだと思うのだ。
 例えば、どんな言動をもって「嫌がらせ」と判断しているのか、「執拗な電話」というのはどのぐらいの期間に何回かかってきてその日付はいつのか、債務者(ジジイ)の転居先であるオバサン宅に債権者である私が電話をしてはいけない法的根拠は何なのか、私が同様の行動をとった場合にどのような法的根拠により法的措置をとるというのか、などなどである。
 前述の要約もさほど原文とボリュームの変わらないものであり、原文の原稿はわずか1枚のみである。これらのことを考え合わせると、相手方弁護士にとっては内容証明郵便の内容より、内容証明郵便を出すという行為そのものが重要であったと考えられる。
 恐らくはこのヘッポコ弁護士は今までの経験で、「弁護士が出す内容証明郵便」というものが素人に対して与えるプレッシャーというものを過大評価しているのだろう。
 今まで色々愉快な法的根拠で「訴えるぞ」、と脅されてきたが、今回はついに法的根拠なしである。ふと、「訴えてやる!」というのをギャグにしているお笑い芸人が思い浮かんだ。ダチョウ倶楽部だっけ?
 
 私にとっては、このお粗末な内容の内容証明郵便は何か使い道があるかもしれない。しかも、相手が法的措置をとるつもりがないということを確信できた。それはすなわち、相手がやましいこと(破産申請の書類に虚偽を記載したというような)をしているという疑惑が深まったことを意味している。
 さて、これに対する返信だがどんな内容にするか。まず、考慮すべきはこちらが返信しても、恐らくは相手方弁護士は再返信はしてこないであろう、という点である。相手にしてみれば、返信がくるということは恫喝が効かなかったことを意味するものであり、これ以上無駄な労力をかけるとは思えないからだ。ついでに言えば、こちらが逆に何らかの法的措置をとるにしても、今の状況では無駄骨に終わることもわかっているであろう。
 この辺の事情を考慮して、方針としては...
・挑発に近い強硬姿勢をとる
・論理的に相手の主張の非違をつく
・質問事項を挙げておく
 これで、可能性は低いであろうがあわよくば返信がくるかもしれない。やはり、「無視される」というのはやりにくいので返信は来た方がよい。無視されるよりは法的措置をとってもらった方がやりやすいぐらいだ。だが、それでも十中九までは返信がくるとは思えないので、「本状到着後○日以内に返信のない場合には、当方の主張を認めたものと判断する」みたいなフレーズをいれておこう。もちろん、返信が来なくてもなんら法的な拘束力はないが、彼我の書面が証拠書類としていずれかの場に出たときには、相手方弁護士に対する裁定者の心証は悪いものとなるだろう。...多分。

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